交通事故によるケガの治療が終わると(症状固定)、
後遺障害の等級がつくかの認定を受けます。
等級の認定は、
損害保険料率算出機構が行うものです。
結果に不服がある場合は、異議申し立てを何度でも行うことができますが、
医師の意見書など新たな資料がないと申し立てが認められることは難しくなります。
後遺障害の等級の認定を受けた場合には、
・逸失利益
・後遺障害慰謝料
の2つの項目が損害項目に加わるのが原則です。
相手方の保険会社の提示金額を見る際にはこの点に気を付けてください。
以下、特に注意すべき点をご紹介いたします。
▼治療費
交通事故では、相手方損保が立て替えて支払っていることがほとんどです。
症状固定の時期について争いがある場合には、
どの時点までは相手方が治療費として認めているのかを注意してチェックしましょう。
▼入院雑費
損保の提示は1日1100円であることが多いですが、
交通事故の裁判基準としては1日1500円程度となります。
金額の差としては大きくありませんが、
「適正な賠償額」という点からは見過ごせない差になりますので注意しましょう。
▼交通費
きちんと項目が上がっていますか?
病院までの交通費の明細書を相手方損保に提出していないと
平気で0円提示されてしまうので注意しましょう。
なお、自動車を利用した場合、
損保の提示は1キロ15円で提示がされると思いますが、
これは裁判上の基準と一緒です。
▼その他費用
交通事故でケガをしたことにより購入した器具などはありませんか?
購入の際に保険会社に話をしているので、
すでに損保が立て替え済みの事も多いですが、
漏れがないかちゃんとチェックしましょう。
▼休業損害
交通事故のケガによる治療のため仕事を休んだ場合に出る項目です。
サラリーマンやOLの方は会社が証明書を出してくれるから問題ありませんが、
特に主婦の方は気を付けてください。
1日5700円という自賠責基準で計算されていませんか?
休業の日数が不当に短くなっていませんか?
そもそも家事労働が評価の対象となっていますか?
▼傷害慰謝料・通院慰謝料
交通事故でケガをして入院や通院をしたことに対する慰謝料です。
私はこれまでたくさんの損保の提示を見てきましたが、
この傷害慰謝料・通院慰謝料が裁判基準で提示されている件は、
1件も見たことがありません。
むしろ裁判基準からは遠くかけ離れた数字であることがほとんどです。
チャックポイントは以下の2点。
・1日4200円で計算されていませんか?
・弊社基準などという相手方損保の基準で勝手に計算されていませんか?
具体的にみなさんのケースでの
傷害慰謝料は無料相談の際にお話しいたします。
▼後遺傷害慰謝料
こちらは交通事故のケガにより後遺障害等級が認定された場合に認められる項目です。
裁判基準では、例えば14級なら110万円、12級なら290万円などとなっています
(以下の項目をご覧ください)。
ところが、この項目も損保の提示は恐ろしいほど低いです。
全体的に「慰謝料」という項目については、
相手方損保はとても冷淡ですので、注意が必要です。
▼逸失利益
交通事故のケガにより症状固定後も収入の減少が見込まれるため付く項目です。
基礎収入額(前年の収入)に労働能力喪失率(等級により決まります)と
労働能力喪失期間(どのくらいの期間影響がでるか)のライプニッツ係数をかけて算出されます。
損保の提示の中には、
このうちの労働能力喪失期間をやたらと短くしているものが数多くあります。
14級のムチ打ちなどを除いて、
就労可能年齢とされている67歳までちゃんと認められているかどうかのチェックが必要です。
▼過失割合
事故についてのこちら側の落ち度です。
事故状況からして不自然な数字になっていないですか?
以上、交通事故で後遺障害等級が付いた場合のチェックポイントを簡単にあげましたが、
同じ交通事故はありませんので、個別具体的なアドバイスこそが必要です。
一人でインターネットでいろいろ調べるだけなく、
どうぞお気軽に名古屋駅の弁護士・交通事故の無料相談をご利用ください。
上記の項目のうち、特に後遺障害等級が付いた件での、
「後遺傷害慰謝料」の金額については注意が必要です。
ご参考までに、
「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる「赤本」)」での
後遺障害慰謝料の裁判基準の金額をご紹介しておきます。
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1級 2800万円
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2級 2370万円
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3級 1990万円
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4級 1670万円
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5級 1400万円
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6級 1180万円
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7級 1000万円
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8級 830万円
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9級 690万円
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10級 550万円
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11級 420万円
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12級 290万円
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13級 180万円
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14級 110万円
以上の通りとなっております。
みなさんに提示された金額は、
上記の金額と比較していかがでしょうか?
もし大幅に低い場合には、
示談交渉を弁護士にご依頼されることも含めてご検討下さい。
死亡事故の場合は、
積極損害として入院費など治療費が認められるのはもちろん、
葬儀費用や場合によっては墓石代なども請求することができます。
また死亡事故の場合の特徴として、
逸失利益について、生活費分が控除されるという点があります。
これは、仮に生存していた場合には、
収入のうちに生活費の出費を余儀なくされることから、
その分は損害額から控除しようという考えに基づくものです。
一家の支柱の方が亡くなられた場合には30%~40%、
男性の単身者がなくなられた場合には50%などと、
どのような方が亡くなられたかによって控除率は異なります。
さらに、死亡事故の場合、
亡くなられた方の相続人だけでなく、
近親者に慰謝料を請求する権利が認められています(民法711条)。
ご依頼をお考えの場合は、
相続人の方と近親者の方と足並みをそろえて頂く方が
よりスムーズに相手方との交渉が進むことになります。
交通死亡事故の場合の賠償額のチェックポイントです。
死亡事故の場合は、
「逸失利益」と「死亡慰謝料」の2つの項目にまず注目してください。
▼逸失利益
この項目では、収入、期間、生活費控除率が問題となります。
・収入
きちんと亡くなった方の収入が反映されていますか?
特に主婦の方の場合には、パートなどの年収が基礎とされてしまっていませんか?
損保側が勝手に収入を削ったりしていませんか?
また若い方の場合には低い水準のまま計算されていませんか?
・期間
ちゃんと67歳まで計算されていますか?
それを超えて就労可能な場合、そういった事情も考慮されていますか?
・生活費控除率
裁判基準と比較して無駄に控除されていませんか?
▼死亡慰謝料
裁判基準では最低でも2000万円は認められる可能性が高いです。
相手方損保からとても低い金額が提示されたりしていませんか?
以下の項目も参考の上、不当に低い金額で提示されていないかチェックしてください。
特に交通死亡事故の場合、
賠償額は高額になります。
サインの前に必ず弁護士に相談されることをお勧めいたします。
交通事故で亡くなった方の死亡慰謝料については、
亡くなった方ご本人、亡くなられた方の相続人や一定範囲の親族にも
慰謝料が認められています(民法710条、711条)。
赤い本では、
死亡慰謝料の基準について、
次のように定めています
(上記のご本人の分と親族の方の分の合計額です)。
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一家の支柱の方が亡くなられた場合 2800万円
-
母親、配偶者の方の場合 2400万円
-
その他の方の場合 2000万円~2200万円
裁判例では
当然上記基準と若干上下することがございますが、
基本は上記金額が基準となります。
相手方保険会社からみなさんへの提示金額は
きちんと数字が上がっていますでしょうか?
このほか、ご不明な点がございましたら、
名古屋駅の弁護士・交通事故の無料相談の際に
お尋ねください。
▼「過失相殺」とは、
交通事故が発生したことについて被害者側にも落ち度がある場合、
損害賠償額から被害者の落ち度の分だけ金額を減らすというものです。
青信号で横断歩道を歩行中の場合や追突事故などのケースを除き、
多くの件では加害者側の保険会社がこの「過失相殺」を主張します。
過失割合については、
どのような事故態様かということについて基本的な割合が決まり、
事故の時間帯や被害者の年齢、事故発生場所の状況などにより
割合を修正していくことになります。
事故の態様については、
現場を調べた警察の「実況見分調書」などをもとに判断していきます。
▼「損益相殺」とは、
事故に遭ったことについて被害者が給付を受けた場合、
相手方から支払ってもらう賠償額からその分を控除しようというものです。
損益相殺の対象となるのは、
すでに被害者が受け取った自賠責からの損害賠償額や
給付が確定した労災保険金などで、
死亡事故の場合の生命保険金や事故によって失業した場合の失業保険などは
損益相殺の対象とはなりません。